物理
このセクションでは、次のトピックを通じてモジュールの理論とモデリングについて説明します。
スカラー輸送方程式
「種」(Species) モジュールでは、Creo Flow Analysis が任意のユーザー定義のスカラー輸送方程式を解きます。任意のスカラー の場合、一般輸送方程式は以下の形式をとります。
ここで はそれぞれ、スカラー における、ユーザー指定の拡散係数、乱流シュミット数、ソース項です。ここで、 は等方性だと見なされます。ここには、直接指定された値またはユーザー定義の関数を指定できます。 は、指定した値またはユーザー定義の関数である指定されたシュミット数によって、間接的に決定されることもあります。乱流シュミット数 はユーザー指定の定数で、デフォルト値は 1 です。ソース項 には定数を指定するか、ボリュームあたりのソースまたは計算ドメイン内のソース合計という形式のユーザー定義の関数を指定できます。
「種」(Species) モジュールを選択すると、スカラー方程式が 1 つだけ追加されます。 スカラーの場合、モジュールを 回選択し、それぞれの種に異なる名前を割り当てる必要があります。
式 2.376は、一般的なスカラー方程式です。これは、単独で 1 つのスカラー輸送について解決するか、一部またはすべての標準モジュールへの追加として解決できます。拡散とソース項はユーザー入力による定数値またはユーザー定義関数によって決定されるので、一般的なスカラー輸送方程式を使用して、乱流モデルや燃焼モデルなどの新しい物理モデルを作成できます。方程式の一部の項のみで構成される縮小形で使用することもできます。例を以下に示します。
ポアソンとラプラス方程式
定常モードでは、対流流束が解決されていないか定数のままである場合、式 2.376は拡散のみの問題に縮小されます。
また、乱流拡散が無視され ( または )、 が定数である場合、式 2.376はポアソン方程式になります。
さらに、 の場合、スカラーの式 2.376がさらにラプラス方程式に追加されます。
多くのアプリケーションでは、 がボリューム電荷密度 () に置き換えられ、 が誘電率 () である場合、式 2.376を適用して電場における電位 () を計算できます。
対流輸送
拡散の項 (、または ) を使用しない場合、式 2.376は次のように縮小されます。
式 2.376を使用して、多相流れにおける相の体積分率 () の輸送をモデル化できます。ここでは、相が混ざり合うことはありません (多相モジュールを参照)。
、および の場合、式 2.376は非粘性流のオイラー方程式を表します。
境界条件
ユーザー定義のスカラーは物理量になります。したがって、境界条件は流れ境界条件として定義されません。たとえば、スカラー について、流れの入口境界はまったく別のものを意味する可能性があります。この結果、一般的なスカラー輸送方程式では、選択した物理境界に対して、定義されているすべての境界タイプを適用できます。
がローカル境界サーフェスに垂直な単位ベクトルの場合、単位面積あたりの質量流束の一般式は次のようになります。
移流と拡散が両方とも境界に存在する場合は、次のようになります。
スカラー輸送では、 は、境界で物理ドメインに出入りする単位面積あたりの流束を表します。アプリケーションに応じて、次の共通の境界条件がこの一般式から派生します。
ゼロ流束
境界全体 (垂直方向) の単位面積あたりの流束はゼロで指定されます。ゼロ流束 の条件では、対流流束と拡散流束が正確にバランスを取る必要があります。
つまり、1 つの項がゼロの場合、もう一方の項もゼロでなければなりません。たとえば、ソリッド (ウォール) の境界では、サーフェスに対する法線速度はゼロ () ですが、 はゼロであってはなりません。式 2.376の拘束を満たすには、境界でのスカラーの勾配をゼロ () にする必要があります。
Creo Flow Analysis では、ウォールで、ゼロ流束がスカラー のデフォルトの境界条件になります。
指定した値
指定した値は境界条件であり、そこでは境界でのスカラーの値 () が のユーザー入力値によって直接決定されます。
Creo Flow Analysis では、流れ入口で、指定した定数値が のデフォルトの境界条件になります。
対称
対称境界条件の場合、境界に垂直なゼロ勾配がスカラー に対して適用されます。
Creo Flow Analysis では、流れ対称境界で、対称も のデフォルトの境界条件になります。
出口
出口は、流れがドメインに出入りすると思われる開口部の境界条件として使用されます。指定圧力出口、または流れ内のレジスタまたはコンデンサの場合、これがスカラー のデフォルトの条件になります。
出口境界では、必須入力はスカラー に対する指定した値です。 に適用される実際の境界条件は、流れの条件によって異なります。
ドメインから離れる流れ - 流れが、出口から計算ドメインを出ていく場合、または反転した流れによって入口から計算ドメインを出ていく場合、境界ではゼロ勾配が推定されます。
ドメインに入る流れ - 流れが、入口から計算ドメインに入る場合、または反転した流れによって出口から計算ドメインに入る場合、境界では指定した値が適用されます。
対流流束
境界では、単位面積あたりの の対流流束 () は、スカラー () および交換係数 () の外部アンビエント値の関数として決定されます。
ここで、 はユーザー入力のパラメータです。交換係数 の単位が であることに注意してください。既知の対流流束 から、 の境界値は式 2.376から取得されます。
指定スカラー流束
この境界条件では、スカラーの流束は次の 2 つの方法で指定されます。
面積あたりの流束 - 式 2.376では、単位面積あたりのスカラー流束 は、定数値またはユーザー定義関数としてユーザー入力によって指定されます。
したがって、 は、流れの条件に基づいて式 2.376から取得されます。
合計流束 - 合計スカラー流束は、定数値またはユーザー定義関数としてユーザー入力によって指定されます。
ここで、 は指定した合計スカラー流束で、 は境界の合計面積です。したがって、 は、流れの条件に基づいて式 2.376から取得されます。
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