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シェル特性の式
ここでは、Creo Simulate でのシェルのメカニカル特性の数学的表現法についてごく簡単に説明します。Creo Simulate でシェル特性およびシェル結果を表すときの用語も定義します。
この章には以下のセクションがあります。
項目
概要
シェル特性の計算に使用する式
シンボル一覧
参考文献一覧
概要
このセクションで示されている式は、シェルのフォース、モーメント、歪み、曲率変化、シェル特性、およびシェルの結果の間の基本的な関係を表しています。これらの式を用いて、さまざまなモデリングおよびシェルの結果データを表す方法をおおまかに定義しています。
積層シェルの力学的挙動を定義する特性は、積層板剛性を定義するときの「シェル特性定義」(Shell Property Definition) ダイアログボックスで指定します。詳細についてはシェル特性についてを参照してください。結果を表示する時点で、材料軸方向を基準にして以下の特性を定義します。
シェルの引張り剛性
シェルの横せん断剛性
シェルの引張り/曲げ結合剛性
シェルの曲げ剛性
シェルの合成熱モーメント係数
シェルの合成熱荷重係数
単位面積あたりの質量
単位面積あたりの回転慣性
測定点の材料軸方向または座標系を基準にして、以下の結果量を確認できます。詳細については、基準を参照してください。
X 軸および Y 軸を中心としたシェル中間サーフェスの回転
中間サーフェスの歪み
シェル中間サーフェスの曲率変化
シェルの合力モーメント
シェルの合力フォース
シェルの横せん断力
応力
シェル中間サーフェスの変位
これらの用語を表すシンボルについては、シンボル一覧を参照してください。
ここに掲載されている式とその説明は、シェルの解析を解説するためのものではありません。積層シェルおよび異方性シェルのモデリングの詳細については、Jones (1)、Reddy (2)、Tsai (3)、Ugural (4) ら各氏による文献を参考にしてください。参考文献一覧にこれらの文献の詳細が示されています。
このセクションで用いられている図と式は、フラットシェル、つまりプレートに関連するものです。ここで用いられている技術的な概念はカーブシェルまで一般化されていますが、カーブシェルの数式はさらに複雑なため、ここでは取り上げていません。
シェル特性の計算に使用する式
シェルは、幅と長さに比べて薄い Creo Simulate モデルの箇所です。構造の中の薄い領域はシェルを使用してモデリングするのが計算上効率的です。この効率性の一部は、シェルの挙動に関する基本的な推定によって導かれます。すなわち、シェルの力学的挙動は、シェルの中間サーフェスの力学的挙動を表すことによって近似できます。
したがって、シェルの変位はその中間サーフェスの変位と回転によって表すことができ、シェルの歪みはその中間サーフェスの歪みと曲率変化によって表すことができ、シェルの平衡はシェルの厚みについて積分された応力の平衡によって表すことができます。
以下の図では、フラットな長方形シェルのエッジが直交座標系の X 軸および Y 軸と揃っています。この座標系の XY 平面はシェルの上側サーフェスと下側サーフェスの中間位置にあるため、シェルの中間サーフェスは z=0 にあります。シェルの厚みを t とすると、次の図に示すように、上側サーフェスは z = t/2 にあり、下側サーフェスは z = –t/2 にあります。
前述のように、シェルの任意の点 (x, y, z) の変位を、シェルの中間サーフェス上の点 (x, y, 0) の変位および回転によって表すことができます。具体的には以下のように仮定します。
ここで、
は X、Y、Z の各方向における変位の成分
は中間サーフェスの変位の成分
は X 軸または Y 軸を中心とした中間サーフェスの (微小) 回転
同様に、点 (x,y,z) の歪みの成分 は、中間サーフェス (薄膜) の歪み () と曲率変化 () によって以下のように表すことができます。
式 (A.2) にはテンソルせん断ひずみの成分 が含まれ、テンソルせん断ひずみの成分の値の 2 倍となるエンジニアリングせん断歪みの成分は含まれていません。
フラットシェルの場合のテンソルせん断歪みの成分は以下のとおりです。
および
応力の成分 をシェルの厚みについて積分することで、シェルの合力フォース ()、シェルの合力モーメント ()、およびシェルの横せん断フォース () が求められます。シェルの合力フォースは以下の式によって与えられます。
シェルの合力モーメントは以下の式によって与えられます。
シェルの横せん断フォースは以下の式によって与えられます。
以下の図は、合力フォース、合力モーメント、および横せん断フォースに使用される符号の規則を示しています。正のモーメント によって、シェルの上半分 (z > 0) では正の歪み が生じ、シェルの下半分 (z < 0) では負の歪みが生じます。
シェルの合力と、中間サーフェスの歪みおよび曲率変化との関係は以下の式によって与えられます。
および
式 (A.6) で、量 (ここで i,j = 1, 2, 6) はシェルの引張り剛性と呼ばれ、量 は曲げ剛性と呼ばれ、量 は引張り/曲げ結合剛性と呼ばれ、量 (ここで k,l = 4,5) は横せん断剛性と呼ばれます。量 は中間サーフェスでの横せん断歪みです。量 は合成熱フォース、量 は合成熱モーメントです。
式 (A.6) と (A.7) で使用されているシェルの剛性と熱合力は、シェルの材料特性をシェルの厚みについて積分することで定義されています。引張り剛性、曲げ剛性、および引張り/曲げ剛性は以下の式によって与えられます。
および
および
ここで、 は材料の換算剛性です。
横せん断剛性は以下の式によって与えられます。
ここで、
は材料の (非換算) 剛性です。
はせん断補正係数で、等質シェルの場合は になります。
シェルの材料が中間サーフェスから対称に分散している場合、式 (A.9) の積分はゼロになり、引張り/曲げ結合剛性 も同様にゼロになります。
合成熱フォースと合成熱モーメントは以下の式によって与えられます。
および
ここで、
は材料の熱膨張係数です。
は応力がない状態からの温度変化です。
温度変化がシェルの厚み全体で均一な場合、式 (A.12) と (A.13) の を積分から除去し、式 (A.14) および (A.15) とすることができます。
ここで、 はシェルの合成熱係数と呼ばれ、これは以下の式によって与えられます。
シェルの質量特性も、材料特性データをシェルの厚みについて積分することで求められます。単位面積あたりの質量 は以下の式によって与えられます。
ここで、 は材料の密度です。
単位面積あたりの回転慣性 は次の式によって与えられます。
シンボル一覧
このセクションで用いられているシンボルについて以下で説明します。
シンボル
定義
熱膨張係数
(i,j = 1,2,6)
シェルの引張り剛性
(k,l = 4,5)
シェルの横せん断剛性
(i,j = 1,2,6)
シェルの引張り/曲げ結合剛性
X 軸および Y 軸を中心としたシェル中間サーフェスの回転
(k,l = 4,5)
材料剛性
(i,j = 1,2,6)
シェルの曲げ剛性
温度変化
歪み
中間サーフェス (薄膜) の歪み
シェル中間サーフェスの曲率変化
(k,l = 4,5)
せん断補正係数
シェルの合力モーメント
シェルの合成熱モーメント
シェルの合成熱モーメント係数
シェルの合力フォース
シェルの合成熱フォース
シェルの合成熱荷重係数
シェルの横せん断力
(i,j = 1,2,6)
材料換算剛性
単位面積あたりの質量
単位面積あたりの回転慣性
応力
t
シェルの厚み
変位
シェル中間サーフェスの変位
x, y
中間サーフェスの座標値
Z
シェルの中間サーフェスに直交する座標値
参考文献一覧
1. Jones, Robert M. Mechanics of Composite Materials.Washington, DC:Scripta Book Company, 1975.
2. Reddy, J.N. Energy and Variational Method in Applied Mechanics.New York:John Wiley & Sons, 1984.
3. Tsai, S. W. and H. T. Hahn Introduction to Composite Materials.Westport, CT:Technomic Publishing Co., 1980.
4. Ugural, A. C. Stresses in Plates and Shells.New York:McGraw-Hill Book Company, 1981.