物理
計算された流れ場、指定した流線境界、およびリリース条件に基づいて、質量のない粒子の運動を追跡して、流れの流線を作成します。
粒子の運動方程式
粒子の運動を追跡するために、各粒子の軌道方程式が解析的または数値的に計算 (積分) されます。ローカル流れ場とともに移動する質量のない粒子の場合、運動方程式は次のように書き換えられます。
式 2.419
ここで、
は粒子の位置ベクトルです。粒子速度
は位置
における流速と同じです。したがって、流動ドメイン内の
の軌道は流れ流線です。
境界条件
Creo Flow Analysis では、境界での流れの流線の挙動を決定するために、流線境界条件が適用されます。流線がウォールや入口境界などの流れドメインの境界 (外部境界や固体-流体インタフェースを含む) に位置しているとき、境界で以下のいずれかが発生する可能性があります。
• 流線が反射する。
• 流線が境界を出入りする (入る、出る、入ってから出る)。
• 流線がファンや多孔ジャンプなどの内側境界ゾーンを通る。
境界での流線の挙動に基づいて、流れ境界条件と流体-固体インタフェースがオープン、対称、ウォールの 3 つのタイプの流線境界条件に再びグループ化されます。
• オープン - 流線は計算ドメインを出入りできます (出る、入る、出てから入る)。通常、オープン境界は流体流れの入口または出口境界です。これは、ウォールや対称などのほかの流れ境界についても同じです。オープン境界では、流線は粒子 (流れ) の速度方向に応じてドメインに出入りできます。
を、計算領域から離れる方向を指すオープン境界への単位法線ベクトルとします。粒子境界速度が
(点での流速と同じ) とすると、オープン境界での流線境界は以下のようになります。
◦ の場合、速度ベクトル
は、計算ドメインから離れる方向を指します。これは、粒子または流れが境界を通って脱出することを示しています。粒子は、境界との衝突点で流れドメインから失われます。
◦ の場合、速度ベクトル
は、計算ドメインを指します。これは、粒子または流れが境界からドメインに入ることを示しています。この粒子は、流入とともに、オープン境界から流体流れにリリースまたは射出されます。この粒子は、境界との衝突点での流線の計算に含められます。
• 対称 - 流線は境界で反射します。通常、流線にとって、対称境界は流れ対称に対応します。これは、オープン流線境界と同じように、粒子のリリースまたは脱出の位置である場合もあります。
を、対称から離れて計算ドメインに向かう方向の、対称境界の点
での法線-対称単位ベクトルとします。さらに、次の
図に示すように、対称流線境界での粒子のインパクト速度 (ローカル流速) の角度を示すために
と
が使用されています。粒子が対称境界から反射する場合、接線速度は同じままで、法線速度は成分の記号のみが変わります。数学的には、粒子または流線対称境界条件は次のように表されます。
式 2.420
ここで、
| 粒子の反射速度 |
| 対称境界の点 での角度 |
| 速度マグニチュード |
| 速度マグニチュード |
図
質量のない粒子は、流れシミュレーションによって取得されるローカル流速で移動するため、流線対称境界で式 2.419を積分するときに境界条件は必要ありません。
• ウォール流線境界
通常、流線にとって、ウォール流線境界はウォール流れ境界に対応します。流線ウォール境界では、質量のない粒子は流体流れとともに移動します。ローカル流速、つまり粒子速度は適切な壁面近傍モデルを使用して取得されるため、式 2.419を解くのに明示的なウォール境界条件は必要ありません。
流線ウォール境界は、外部ウォールであったり流体-固体インタフェースであったりします。オープンおよび対称流線境界の場合、ウォール流線境界は粒子のリリースの位置であることもあります。
粒子のリリース
指定した流線境界から粒子をリリースすることにより、初期条件と流線の値が得られます。ラグランジュの粒子の追跡と同じように、初期条件の決定の手順において、境界 (オープン、対称、ウォール、およびインタフェース) からの粒子のリリース (方向、位置、粒子の数、および分布) と、各粒子への特性の指定が行われます。
流線の場合、質量のない粒子
のリリース位置
での初期速度は、自動的にローカル流速
と同じになるように設定されます。
Creo Flow Analysis では、
「粒子をリリース」(Release Particle) オプションが流線粒子のリリースを制御します。
流線のアニメーション
流れの流線をカーブとして作成および視覚化するために、各粒子の軌道方程式
式 2.419が数値的に計算積分されます。流れの解により、粒子速度または流速の値は判明しており、アニメーション時間サイズ
にわたる粒子速度の前方オイラー積分を使用して粒子の変位を計算します。
式 2.421
ここで、
最初の時間ステップでは、
がリリース位置で、
がリリース速度です。
式 2.422
ユーザー指定のアニメーション時間ステップ
は、流線をアニメーションするために使用される実数の乗数であることに注意してください。値が 1 であれば、アニメーションカーブはローカル速度と同じであることを示します。
の値は、カーブの流速を、ローカル流速に
を掛けたものに変更します。
また、流線カーブの直径を
「線の太さ」(Line Thickness) で指定できます。流線カーブの長さは、ローカル速度にアニメーション時間ステップを掛けたものに等しくなります (
)。さらに、ループまたは停滞している流線の追跡に大量の計算時間が費やされないように、ユーザー入力
「最大積分ステップ」(Maximum Integral Steps) を使用して、流線アルゴリズムが流線の追跡に使用される程度を制限できます。小さい値を指定すると、計算時間は短くなりますが、非常に小さい値を指定すると、流線の終了が早くなる可能性があります。