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VOF (Volume of Fluid) モデルの特別な考慮事項
VOF モデルと混合物モデル
均一オイラー多相モデリングアプローチでは、VOF (Volume of Fluid) オイラーモデルと混合物オイラーモデルのどちらも、同じセットの混合物 (平均) 支配方程式を解きます。ただし、これらは異なる物理メカニズムに基づき、異なる多相フローレジムに適用されます。
混合物モデル - 相互浸透する連続体として扱われる 2 つ以上の相 (流体または微粒子) のために設計されています。これは混合物の運動量方程式とエネルギー方程式について解き、相間界面が追跡されないか、明確な界面が観測されません。混合物モデルは、粒子を含む低荷重フロー、気泡や小液滴のフロー、沈降、サイクロン分離器などに適用されます。分散相に相対速度を指定して混合物モデルを使用することで、不均一多相フローをモデリングすることもできます。
VOF モデル - 一般的に、2 つ以上の混ざり合わない流体のために設計された非定常表面追跡手法であり、ここでは相間界面の位置が追跡の対象になります。VOF モデルでは、混合物の運動量方程式とエネルギー方程式の 1 つのセットがすべての相によって共有されて、陰的に計算されます。高次移流スキームによる陽的または陰的な厳密時間アルゴリズムを使用して相の体積分率が求められ、相間の鋭い界面が計算されます。VOF モデルは一般的に、層状フロー、自由表面フロー、フィリング、スロッシング、液体内の大きな気泡の運動、ダム決壊後の液体の運動、ジェット破壊の予測 (表面張力)、任意の液体-気体界面の追跡などに応用されます。
VOF の式は、2 つ以上の流体 (相) が相互浸透しないという事実に基づいています。したがって、任意の与えられた制御ボリュームセルにおいて、局所相体積分率のみによって、そのボリュームに 1 つの相だけが含まれているのか相の混合物が含まれているのかが決まります。たとえば、q 番目の相で、セル内の体積分率がαq である場合、以下の 3 つの状態のみが考えられます。
αq = セルに q 番目の相はない
αq = 1: セルに q 番目の相しかない
0< αq < 1: セルに、q 番目の相と 1 つ以上のその他の相の間の界面が含まれている。
したがって、1 つ以上の相の体積分率の輸送方程式を解くことによって、相間の界面の追跡を実行できます。
表面張力の影響
表面張力は、表面積をできるだけ小さくしようとする流体表面の弾性傾向です。液体内の気泡について考えます。気泡内おいては、分子にその近傍から加わる正味の力はゼロです。液体-気体界面においては、凝集による液体分子間の引力が、付着による空気内分子との引力よりも大きいことによって、表面張力が発生します。正味の影響として、その表面上で放射状に内向きの力が生じて気泡が収縮します。気泡内の圧力が増加して分子間の引力とつり合います。
連続体表面力モデル
Creo Flow Analysis では、VOF モデルに、各相間の界面に沿った表面張力の影響を含めることができます。採用されている表面張力モデルは、ブラックビルほかの連続体表面力 (CFS) モデルに基づいています。このアプローチでは、表面張力の影響は、表面力としてではなく、界面に集中する追加の体積力として見なされます。図 2.26に示す自由表面界面では、主流体が相 q (液相)、副流体が相 p (通常は気相) です。連続体表面力モデルに従って、界面における表面の法線方向の局所勾配から表面曲率が計算されます。 を表面法線ベクトルとし、これは主流体の体積分率αq の勾配として定義されます。
界面曲率 k は、単位法線ベクトルの発散を使用して定義されます。
式 2.93
ここで、 はベクトル の大きさです。
表面における表面張力は発散定理を使用して体積力として表され、これは混合物の運動量方程式の追加のソース項です。
式 2.94
ここで、σqp は流体 q と流体 p の間の表面張力係数です。この単位は N/m です。式 2.94では、3 つ以上の相が存在するセルの近傍の力の滑らかな重ね合わせが可能です。セル内に相が 2 つだけ存在する場合、以下の関係式があります。
式 2.95
ここで、ρは混合物の密度です。この結果、式 2.94は以下のようにまとめることができます。
式 2.96
表面張力の追加
表面張力の影響の大きさは、レイノルズ数 Re とキャピラリ数 Ca またはレイノルズ数とウェーバー数 We の 2 つの無次元パラメータによって決まります。
Re<<1 の場合、重要なパラメータはキャピラリ数です。
式 2.97
ここで、U は自由流速度です。Ca>>1 の場合、表面張力は非常に小さいので、表面張力の影響は無視されます。
Re>>1 の場合、重要なパラメータはウェーバー数です。
式 2.98
ここで、L は代表長さです。We>>1 の場合、慣性力が表面張力よりはるかに大きいので、同様に表面張力の影響を無視できます。
壁面付着 (接触角度)
VOF (Volume of Fluid) モデルでは、表面張力モデルとともに壁面付着角度を指定するオプションがあります。ブラックビルほかによれば、この境界条件を壁面に直接適用する代わりに、界面における流体と壁面の接触角度を使用して、壁面付近のセル内の表面法線を調整します。このいわゆる動的境界条件によって、壁面付近の表面の曲率が調整されます。
図 2.26に示すように、θが壁面における自由表面界面の接触角度である場合、壁面近傍セルにおける単位法線ベクトルは以下のように計算されます。
式 2.99
ここで、
壁面に垂直な単位ベクトル
壁面に正接する単位ベクトル
この結果、計算された単位法線速度 を使用して、表面の局所曲率式 2.93と、その後で表面張力式 2.94または式 2.95が求められます。
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