粒子壊食モデリング
壊食は、固体粒子がサーフェスに繰り返し衝突することによって材料が失われる現象です。壊食は、パイプやバルブなどの流路を損傷させます。したがって、壊食率を検討し、壊食の影響を受けやすい流路内の領域を特定することが重要です。
CFA ベースの壊食モデリングには、以下のステップが含まれています。
1. ナビエ-ストークス方程式を解くことによって、速度などの流れ場のデータが取得されます。
2. 粒子が流れ場内でリリースされ、個別に追跡されて、インパクト速度や衝突角度などの情報が取得されます。
3. 粒子の衝突情報が壊食方程式で使用されて、壊食率または粒子の衝突による表面質量の損失が計算されます。
壊食方程式では、以下のようなさまざまなパラメータの壊食に対する影響が検討されます。
参照: Mazdak Parsi et al. "A comprehensive review of solid particle erosion modeling for oil and gas wells and pipelines applications" (2014)
• 粒子の特性 (サイズ、形状、密度、硬度など)
• 粒子の衝突情報 (粒子のインパクト速度
、衝突角度
、粒子間相互作用など)
• 衝突先のウォールの特性 (材料密度、硬度など)
壊食方程式は、ウォールの材料の損失 (固体粒子の衝突を原因とする) を衝突する固体粒子の質量で割ることによって、壊食率
を計算します。
Creo Flow Analysis は以降のセクションで説明する壊食モデルを使用します。
参照: Mazdak Parsi etc. "CFD simulation of sand particle erosion in gas-dominant multiphase flow" (2015)
Finne モデル
Finne の壊食方程式は次のとおりです。
ここで、
| ウォールの材料の密度 (kg/m3) |
| 粒子のインパクト速度 (m/s) |
| 速度指数 (ほとんどの工業用途では 2 に等しい) |
| ビッカース硬度 (Pa) |
| 衝突の角度 (度) |
| このモデルでは、 より大きい粒子の衝突角度については材料の除去が過小評価されるので、垂直衝突については壊食が予測されません。 |
Zhang モデル
Zhang の壊食方程式は次のとおりです。
ここで、
| 壊食率 |
| |
| ウォールの材料のブリネル硬度 (Pa) |
| 粒子の形状ファクター |
| 粒子のインパクト速度 (m/s) |
| 速度指数 (2.41 に等しい) |
| 衝突角度関数 |
粒子の形状ファクター
には、砂粒子のタイプに応じて以下の値があります。
値 | 砂粒子のタイプ |
---|
1.0 | 鋭い、または角ばっている |
0.53 | やや丸い |
0.2 | 完全に丸い |
衝突角度関数は次のようになります。
次の表は、
の値を示しています。
Oka モデル
Oka などの壊食方程式は次のとおりです。
式 2.406
式 2.407
式 2.408
式 2.409
式 2.410
ここで、
| 容積壊食率 (mm3/kg) |
| 垂直衝突角度での壊食損傷 (mm3/kg) |
| 参照のインパクト速度 (m/s) |
| 粒子の直径 (m) |
| 参照の粒子の直径 (m) |
| ビッカース硬度 (GPa) |
次の表は、式 2.406、式 2.407、式 2.408、式 2.409、および式 2.410で使用されている係数の値を示しています。
| | | | | | |
---|
60 | -0.12 | 0.19 | 0.71 | 2.4 | 0.14 | -0.94 |
DNV モデル
DNV の壊食方程式は次のとおりです。
ここで、
| |
(速度指数) | |
次の表は、
の値を示しています。
| | | | | | | |
---|
9.370 | -42.295 | 110.864 | -175.804 | 170.137 | -98.398 | 31.211 | -4.170 |
Mansouri モデル
Mansouri は、次のように壊食方程式を開発しました。
式 2.413
式 2.414
ここで、
| 壊食率 |
| ウォールの材料のブリネル硬度 (Pa) |
| 粒子の形状ファクター |
| 粒子のインパクト速度 (m/s) |
| 速度指数 |
| 衝突角度関数 |
| Vicker 硬度 (Pa) |
| 衝突の角度 (度) |
次の表は、Mansouri (2015) の壊食方程式の式 2.413および式 2.414で使用されているパラメータの値を示しています。
| | | | | |
---|
0.6947 | 2.41 | 0.2 | 0.85 | 0.65 | 4.49e-07 |
Grant-Tabakoff モデル
Grant-Tabakoff モデルの壊食方程式は次のとおりです。
式 2.415
ここで、
式 2.416
ここで、
| 壊食率 |
| 粒子のインパクト速度 (m/s) |
| 衝突の角度 (度) |
| 最大壊食の角度 (度) |
式 2.415内の壊食率
は、衝突する粒子の質量 (グラム) 単位あたりの除去された材料の量 (ミリグラム) として定義されます。速度の単位は ft/s です。
は最大壊食の角度です。たとえば、アルミニウムベースの合金の場合は
です。
次の表は、Grant-Tabakoff モデルの係数の値を示しています。