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最良事例: Creo Simulate でファスナーを使用する
概要
ファスナーはアセンブリ内の 2 つの構成部品を結合するときに使用します。
Creo Simulate のファスナーツールではファスナーのモデル化が作成されます。結合インタフェースや剛体リンクがサーフェスをリンクするために使用されるのに対し、ファスナーは主に構造を介した荷重の伝達を表すために使用されます。Creo Simulate バージョン 2.0 以上では、デフォルトのファスナーは、12x12 の剛性マトリックスを使用して高い精度を実現するティモシェンコビームモデル化を使用してモデリングされます。このタイプのモデリングでは、軸方向フォースに加え、ファスナーのせん断剛性、ねじれ剛性、曲げ剛性が考慮されます。多数のメジャーが自動的に作成され、これらは解析中にファスナーについて計算されたさまざまな数量を示しています。
ファスナーをモデリングする際には、ファスナーのシャフトと穴の間に実際には接触がないことを忘れないようにする必要があります。ねじファスナーとボルトファスナーの両方をモデリングできます。ファスナーはソリッドモデルとシェルモデルでモデリングできます。ファスナーを使用する場合にはモデルに関していくつかの前提条件があります。ファスナーがこれらの前提条件を満たしていない場合、ファスナーを使用できなかったり、ファスナーの作成時や解析の実行時にエラーメッセージや警告メッセージが表示されたりすることがあります。
このドキュメントでは、Creo Simulate でのファスナーの最も効果的な使用方法について理解するのに役立ついくつかのコンセプトについて詳しく説明します。
機能のさらに詳しい説明については、このドキュメントの末尾にある関連リンクを参照してください。
直径と材料を使用したファスナーの作成
2 つのソリッド構成部品を結合するボルトファスナーの 2 次元断面を次の図に示します。
1. 上側構成部品
2. 下側構成部品
3. 生成された環形領域は "分離固定" メカニズムによって接触状態を維持
4. ファスナーのシャフトの直径
5. ファスナーのヘッドとナットの直径
6. 分離テスト直径
図 1
次の数量を指定する際にはいくつかの規則を念頭に置いておく必要があります。
1. 「直径」(Diameter) - この値は、デフォルトでは、ファスナーの最小の穴の直径です。最小の穴の直径より大きい値を指定しないでください。
2. 「ファスナーヘッドとナット直径」(Fastener Head and Nut Diameter) - これはボルトヘッドの直径の値であり、ボルトタイプのファスナーでは、この値はナット直径とも等しくなります。直径の値より大きい値を指定してください。
3. 「分離テスト直径」(Separation Test Diameter) - これは「分離固定」(Fix Separation) メカニズムによって接触状態を維持するファスナーの周囲に作成される環形領域の直径です。ヘッドとナットの直径よりも大きい値を指定してください。これはボルトシャフトの直径の値の 2 倍以上でなければなりません。分離テスト直径の領域にサーフェス領域を作成することをお勧めします。
ファスナー間のインタフェースについて
モデル内のデフォルトのインタフェースはフリーインタフェースです。
モデル内のファスナーによって結合された 2 つの部品間のインタフェースをモデリングする最も精度の高い方法は、これらの部品間に実際の接触インタフェースを作成することです。ファスナーを使用して 2 つの構成部品を結合した場合に、この 2 つの構成部品が相互溶け込みしてはなりません。「分離固定」(Fix Separation) によって、2 つの部品間のインタフェースが素早く簡単に近似されます。「分離固定」(Fix Separation) チェックボックスをオンにした場合、2 つの構成部品は「分離固定」(Fix Separation) メカニズムによって接触した状態を維持します。サーフェス間剛分布ばねによって、2 つの部品の相互溶け込みが防止されます。どのような場合に「分離固定」(Fix Separation) を使用し、どのような場合に接触を使用するかについては、次のような経験則があります。
モデルに接触インタフェースが定義されているときに、ファスナーも定義する場合、ファスナーによって結合する 2 つの構成部品間に接触インタフェースを定義することをお勧めします。接触解析は非線形ですが、「分離固定」(Fix Separation) が設定されているときに作成される解析は線形解析なので、この場合は「分離固定」(Fix Separation) チェックボックスをオフにします。
ほとんどの圧縮がインタフェースに加わっている場合、「分離固定」(Fix Separation) を使用することをお勧めします。解析を実行した後で、rpt ファイルに一通り目を通します。「分離固定」(Fix Separation) が正しく機能していない場合、rpt ファイルに次のメッセージが含まれています:
"ファスナーで「分離固定」オプションが設定されているので、分離すべき位置で部品を分離できません。このため、この解析の結果が不正確となる可能性があります。ファスナーの「分離固定」オプションをオフにし、必要に応じて、ファスナーで結合されている部品間に接触インタフェースを適用してください。"
「分離固定」(Fix Separation) が正常に機能しているかどうかを示すもう 1 つの指標がメジャー fastenerName_intf_norm_forc です。自動的に作成されたメジャー fastenerName_intf_norm_forc は、分離固定環形領域における、ファスナーで結合した 2 つの構成部品間の全垂直フォースをトラックします。これは Ft-Fc のメジャーです。ここで、
Ft - 環形領域における引張りフォース
Fc - 環形領域における圧縮フォース
rpt ファイルでこのメジャーの値を調べることができます。このメジャーの値が負の場合、正味では圧力フォースが作用しており、「分離固定」(Fix Separation) は正しく機能しています。値が正の場合、正味では引張りフォースが作用しており、構成部品同士が分離しています。たとえば、以下に示す単純なモデルでは、2 つの正方形プレートが中央の穴を貫通するボルトによって結合されています。「分離固定」(Fix Separation) をオンにし、各プレートに 1000 lbm/秒2 の荷重を指定します。500 lbm/秒2 の初期荷重を指定します (「剛性に関係」(Account for Stiffness) チェックボックスをオンにします)。荷重によって 2 つのプレートは反対方向に引っ張られるのに対し、「分離固定」(Fix Separation) ばねはプレート同士を結合された状態に維持しようとします。
1. 負の Z-方向に沿った -1000 lbm/秒2 のフォース
2. 正の Z-方向に沿った 1000 lbm/秒2 のフォース
3. 「分離固定」(Fix Separation) がオンになっているボルトファスナー
図 1
図 2
1. 部品が分離しようとする領域
図 3
静解析の実行後、メジャー fastenerName_intf_norm_forc の値は 179.3237 lbm/秒2 となり、これは正味では引張りフォースが作用していることを示しています。この場合、「分離固定」(Fix Separation) ばねのメカニズムによって、2 つの部品が分離すべきときに固定しようとする力が加わります。これによって間違った結果が生じることがあります。この場合、「分離固定」(Fix Separation) チェックボックスをオフにして、接触している部品間に接触解析を定義する必要があります。
ファスナー初期荷重
Creo Simulate バージョン 3.0 以上では、「分離固定」(Fix Separation) を使用した場合、初期荷重の値とともに「剛性に関係」(Account for Stiffness) チェックボックスを使用できます。
以前のバージョンのソフトウェアでは、2 つの解析を実行し、1 つ目の解析でのファスナーの軸方向フォースの値に基づいて初期荷重を計算する必要がありました。Creo Simulate 3.0 以上では、ユーザーが指定した初期荷重の値がファスナーでの実際の初期荷重となるように、スケール設定された値が自動的に計算されます。
「剛性に関係」(Account for Stiffness) チェックボックスをオンにした場合、モデルの変形が考慮され、ファスナーでの軸方向の引張りフォースの値が小さくなります。外部荷重が適用されない 1 つ目の基準解析を実行することで、初期荷重に適用されるスケールが計算されます。2 つ目の解析の実行では外部荷重が適用され、基準解析から計算された新しい調整済みの初期荷重の値が使用されます。以下の例について考えます。
1. 図 1 には、プレートの中心を貫通する穴に通したボルトによって結合されている、単位長さの 2 つの正方形プレートの単純なモデルが示されています。プレート 1 の上面サーフェスに沿って X 方向に 100 lbm/秒2 のフォース荷重が加わっています。
a. プレート 1
b. プレート 2
c. プレート 1 とプレート 2 を貫通するボルトファスナー
図 4
「初期荷重を含む」をオン
図 5
2. 図 5 に示すように、「初期荷重を含む」(Include Preload) をオンにし、「剛性に関係」(Account for Stiffness) チェックボックスをオンにします。
3. 初期荷重として 500 lb m/秒2 を指定し、静解析を実行します。
4. 解析フォルダに移動し、その解析の rpt ファイルを開きます。rpt ファイルには、2 つの連続する解析が実行されたことが示されています。1 つ目は、モデルの唯一の荷重として初期荷重を考慮する基準解析であり、その計算では外部荷重はすべて無視されます。rpt ファイルに "ファスナー初期荷重をスケール設定する基準解析" という行があります。このファスナーの軸方向フォースの値は、指定した初期荷重フォースの値よりも小さくなっています。この場合、201.22 lbm/秒2 です。
図 6
図 7
5. rpt ファイルには、さらに "スケール設定されたファスナー初期荷重と外部荷重を使用した解析" という行もあります。ここでは、基準解析から計算された、スケール設定されたファスナーの初期荷重が使用されています。ここでのファスナーの軸方向フォースの値は、初期荷重として指定した値 500 lbm/秒2 に非常に近くなっています。
「初期荷重を含む」(Include Preload) をオンにし、「剛性に関係」(Account for Stiffness) はオンにしていない場合、上記の計算を手動で行う必要があります。
その場合、外部荷重なしで 1 つ目の解析を実行する必要があります。次の式でファスナーの軸方向フォースの値を使用します。
Fi=(Fn)2/Fp
Fi - 必要な初期荷重入力
Fn - 静解析での基準の荷重入力
Fp - 静解析でレポートされたファスナーの軸方向フォース (引張りフォース)
初期荷重が 500 (Fn) の場合、1 つ目の解析でファスナーの「初期荷重フォース」(Preload Force) として 500 を指定します。1 つ目の解析でのファスナーの軸方向フォース (Fp) の値は 261.6535 です。
図 8
図 9
これらの値を式に代入すると、「初期荷重フォース」(Preload Force) として実際に入力する必要がある Fi (必要な初期荷重入力) の値は約 956.5588 になります。外部荷重なしで入力初期荷重フォースとして 960 を指定して 2 つ目の解析を実行した場合、rpt ファイルでレポートされるファスナーの軸方向フォースの値は、必要な初期荷重フォースである 500 に非常に近くなります。
複数のファスナーの作成
ファスナーのパターンを作成することはできませんが、モデル内に複数のファスナーを作成する必要がある場合、ファスナーとそのすべてのプロパティをコピーして貼り付けることができます。
ファスナーをコピーして貼り付けるには、次の手順に従います。
1. モデルツリーまたはグラフィックウィンドウで、コピーするファスナーを選択します。
2. 右クリックして「コピー」(Copy) を選択します。
3. 右クリックして「貼り付け」(Paste) を選択します。
4. 「ファスナー定義」(Fastener Definition) ダイアログボックスが開き、コピーしたファスナーに指定されているすべてのフィールドが表示されます。
5. 作成する新しいファスナーの参照を指定します。必要に応じてその他のフィールドを修正します。
6. 「OK」をクリックすると、ファスナーのコピーが作成されます。同じファスナーを複数回貼り付けることでさらに多くのファスナーを作成できます。
ファスナーのユーザーインタフェースとサポートされている機能のマトリックス
次のマトリックスには、サポートされている各種機能とそれに対応するユーザーインタフェースオプションが示されています。
ポイント間ボルト
エッジ間ボルト
ねじ
一般的な制限
シェル結合
Yes
Yes
No
ファスナーを作成する場合の一般的な制限については、前提条件のドキュメントを参照してください。
ソリッド結合
No
Yes
Yes
分離固定
該当なし
Yes
Yes
「分離固定」(Fix Separation) がオンになっていて、「摩擦なしインタフェース」(Frictionless Interface) がオフになっている場合、全せん断フォースインタフェースによって伝達されます。逆に言えば、「摩擦なしインタフェース」(Frictionless Interface) がオンになっている場合、全せん断フォースはボルトによって伝達されます。
初期荷重を含む
該当なし
Yes
Yes
剛性に関係
該当なし
Yes
Yes
ファスナー構成部品間の接触インタフェースを手動で定義した場合、ファスナーの「分離固定」(Fix Separation) および「摩擦なしインタフェース」(Frictionless Interface) オプションは完全に無視され、せん断は次のように決定されます。
無限摩擦 - 全せん断はインタフェースによって伝達されます。
場合によっては、ファスナーとインタフェースの相対的な剛性に応じて、ファスナーが少量のせん断を伝達することもあります。
摩擦なし - 全せん断はファスナーによって伝達されます。
有限 - インタフェースとファスナーでせん断が共有されます。
接触インタフェース上のファスナーの剛性と摩擦の値によって決まります。