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スナップスルーを含む
スナップスルーの挙動は構造の変位の不安定現象です。外部荷重が増加しなくても、ある形態から別の形態に変位がジャンプします。
スナップバックの挙動は構造の変位の不安定現象であり、指定変位が増加しなくても、ある形態から別の形態に変位がジャンプします。
ほとんどの非線形解析では、ニュートン法 (荷重制御法) を使用して、フォース-たわみ曲線上の各ステップにおける解を収束させます。荷重は各サブステップで有限量だけ増加し、平衡イテレーションの間は一定になります。(荷重制御での) スナップスルーの場合、制限点に 2 つの解が存在することがあります。増加する荷重の下では、変位はジャンプし、ジャンプが大きいので、解析が収束することはめったにありません。変位制御法でも、荷重に大きなジャンプがある場合、収束しない可能性があります。
以下の図は非線形解析の荷重変位曲線を示し、ここでλは適用荷重、μは変位です。
1. o-a-d : スナップスルー (荷重制御)
2. o-a-b-c : スナップアンダー (変位制御)
この例の荷重制御法では、解析は点 a の後で収束せずに o-a-d というパスをたどり、構造の安定性についての不完全または誤った情報を与えています。変位制御法でも、解析は点 b の後で収束せずに、o-a-b-c というパスをたどる可能性があります。
荷重制御法では荷重ステップが一定に維持され、変位制御法では変位ステップが一定に維持されます。ただし、弧長法アルゴリズムでは、収束が得られるまで解が指定したパスをたどるように、荷重係数が各イテレーションでの係数によって修正されます。この方法では、平衡パスの追加の荷重と変位のペアが記録されます。
非線形解析における弧長法について
平衡方程式の非線形系の解経路を徹底的に調査することには、構造の全体的な臨界挙動を把握するうえで非常に実践的な意義があります。一般的な経路追従を使用する方法を弧長法と呼びます。このような方法の本質的な目的は、不明な荷重パラメータを特定するための一連の非線形方程式に拘束条件を追加することです。経路追従法は広く定着しているため、さまざまな方法に関する文献が発行されています。多数ある既存の増分反復非線形解法のうち、Riks によって開発され (1979)、後に Crisfield によって修正された (1981) 弧長法が最も広く採用されています。Creo Simulate では Crisfield の弧長法が使用されています。
単純な構造の場合、構造体がさらなる荷重を受け入れられなくなり、崩壊する極限点の荷重レベルを見つける必要があるだけです。崩壊荷重は通常、反復解法で収束が達成されたなかったことと関係があります。その他のモデルの場合、構造の個々の構成部品の解析を実行し、極限点後の応答の性質に関する情報を取得することが重要です (図 1 を参照)。これにより、構造体全体の性能と安定性を把握し、不安定な領域を通過する際の構造体の挙動について洞察を得られます (図 2 を参照)。
図 1
1. 極限点
2. F - 荷重
3. u - 変位
図 2
1. 次の点は?
2. F - 荷重
3. u - 変位
Crisfield の球弧長法
Crisfield (1981) は、その弧長法で超球を使用しました。このアプローチは、Newton-Raphson (m.N-R) 法と組み合わせて、反復法として使用されています。この方法では、接線剛性マトリックスが各反復において再度形成または因数分解されず、代わりに固定され、各荷重増分の開始においてのみ形成または因数分解されます。図 4 は、1 次元問題に対する、m.N-R と組み合わされた Crisfield の方法を定性的に示しています。
図 4
1. 超球
2. 平衡反復
3. F - 外力
4. u - 変位
「収束精度」(Convergence) タブで「スナップスルーを含む」(Include Snap-through) を選択すると、Crisfield の球弧長法がアクティブ化され、これによってスナップスルーおよびスナップバック構造体の荷重変位曲線が正確にトレースされます。
大変形解析で収束判定方法として「シングルパスアダプティブ」(Single-Pass Adaptive) または「クイックチェック」(Quick Check) を選択した場合、円弧長アルゴリズムをアクティブ化するには、「スナップスルーを含む」(Include Snap-through) を選択します。スナップスルー座屈と後座屈の問題の荷重変位履歴が記録されます。このオプションは、コンピュータへの負荷が大きくなるので、必要な場合にのみ選択します。
スナップスルー座屈解析と後座屈解析では、Creo Simulate はスナップスルーの開始と終了を .rpt サマリーファイルに記録します。
以下のコンフィギュレーションオプションを使用して、出力についてさらに調査することもできます。
sim_newton_debugprint - このオプションの値を yes に設定すると、mN-R 法と弧長法の両方の詳細なデバッグ情報を .pas ファイルに出力します。
sim_nl_ldc - .ldc に設定すると、荷重たわみ曲線を yes ファイルに出力します。
.ldc ファイルは、値がコンマで区切られているテキストファイルです。.ldc ファイルには、各出力時間ステップの 3 つの数量について評価された 3 つの列があります。
以下の有限要素方程式系:
K.dx=df
X=X+dx
F=F+df
L2= SQRT(X.X)
SF =SQRT(dx.dx)/SQRT(X.X)
ここで
K - 接線方向剛性マトリックス
dx - 与えられた荷重ステップの変形ベクトル
df - 荷重増分
X - 全変形ベクトル
F - 全荷重ベクトル
LF - 荷重係数
L2 - 全変形のノルム
SF - スナップ係数
.ldc ファイルは以下のようになります。
1 つ目の列: LF - 荷重係数。
2 つ目の列: L2=SQRT(X.X) - モデルで生じた全変形のノルム。
3 つ目の列: スナップ係数 SF = SQRT(dx.dx)/SQRT(X.X) - スナップ係数が大きいほど、スナップスルー解析が失敗するリスクが高くなります。
.ldc ファイル内の 3 つ目の列 (スナップ係数 SF) の値が 0.95 より大きい場合、モデルでスナップスルー解析を実行する必要があります。この場合、「収束精度」(Convergence) タブで「スナップスルーを含む」(Include Snap-through) を選択して解析を実行しなければなりません。
sim_snap_tolerance_factor - スナップスルーを開始するか遅延するかを決定します。スナップスルーを遅延する場合は、このオプションを 1 より大きい値に設定します。スナップスルーをより早く開始するには、このオプションを 1 より小さい値に設定します。
スナップスルーまたは座屈解析の荷重変位曲線は、スナップスルーの結果を表示するにはで説明されているように、適用荷重に対する変位メジャーのグラフを表示することによって確認できます。
解析の最適な方法を選択するためのガイドライン
文献で予測されているように、構造が安定平衡と不安定平衡の間で短い荷重たわみ経路に渡って振動する場合は、弧長法の性能が最も劣っています。ユーザーは弧長法が極限点に収束するときに構造崩壊エラーに気付き始めます。理論的には、そのような点での構造の剛性は 0 か無限であり、それによって数値エラーが誘発されます。一般的には、解が極限点に収束するシナリオでは、誤ってステップを極限点の近くに配置しないように、異なる出力ステップを試すことをお勧めします。可能であれば、そのような極限点が回避されるように出力ステップを設定するか、出力ステップを大きくして極限点を回避してください。スナップ現象が短い場合は、弧長法よりもデフォルトの m.N-R 法のほうが堅牢です。デフォルトの m.N-R 法と合理的に詳細なステップを使用してシミュレーションを行うと、そのような場合についてより深い洞察を得られます。
Crisfield の弧長法を m.N-R 法とともに使用すると、水平および垂直接線極限点に関連する問題を解決するために役立ちます。弧長法の数値の性能は、構造が安定平衡と不安定平衡の間で長い荷重たわみ経路に渡って振動する場合には、非常に有効です。このようなモデルでは、収束の速度とアルゴリズムによって選択されたステップが非常に効率的です。
方法の選択においては、エンジニアリングの観点からの判断がある程度必要とされます。両方のメソッドが収束に失敗した場合は、モデル、荷重、または解戦略をレビューすることを検討してください。
参考文献一覧
1. E. Ricks, An incremental approach to the solution of snapping and buckling problems. Int. J. Solids Structures 15,524-551 (1979).
2. Crisfield M.A. A fast incremental/iterative solution procedure that handles snap-through. Computer and Structures, 13(1):55–62, 1981
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